2008年08月 東北 2日目 - 秋田内陸縦貫鉄道、北上線乗り継ぎで鉛温泉へ
寝台特急「あけぼの」で鷹ノ巣に着いて、秋田内陸縦貫鉄道に乗り継ぎ、阿仁マタギで途中下車してマタギの湯とマタギ資料館に立ち寄りました。なお、当時の秋田内陸縦貫鉄道の急行「もりよし」は、急行専用車両のAN-8900形で運行されていました。
平成20年(2008年)8月23日(土)
秋田到着20分前に車内放送再開。秋田定刻発車。ここで車掌交代とともに車内販売が乗り込む。前方の8号車からの営業のため、すぐに回ってくる。朝から本格的に食べるほどの食欲は無いが、サンドイッチとホットコーヒーを購入。今では車内販売でもSuicaが使える。
秋田で下車する客は多かったようだ。ただ、通路で喫煙できるのはこの8号車だけなので、他の車両の乗客の中にも、8号車まで来て通路や空いた席で喫煙しつつくつろいでいる人もいるようだ。
鯉川で上り列車と行き違いのための運転停車。通過して行ったのは701系の快速列車だった。ブルートレインの凋落が言われて久しいが、特急が快速に道を譲るのも、そのような流れによるものか。
鷹ノ巣が近づいたので、荷物を降ろして、通路の折り畳み椅子に腰掛ける。寝台車(ゴロンとシートだが)の通路の背景に流れる風景は、旅の雰囲気を醸し出す。外は曇っているが、今のところ雨にはなっていない。
鷹ノ巣のホームの長さがギリギリなのか、先頭の機関車と電源車はホームから外れて停車している。
JRの「鷹ノ巣」駅と秋田内陸縦貫鉄道の「鷹巣」駅は、駅舎が隣同士に並んでいる。中はホームがつながっていて、中間改札は無いようだ。ただ、駅舎撮影とホリデーフリーきっぷ購入のため、一旦改札を出た。
鷹巣は有人駅で、硬券の乗車券も販売している。本日現在、券売機が故障中のため、すべて窓口販売。ここでホリデーフリーきっぷを購入して乗車。
◎鷹巣 828→926 阿仁合 阿仁合行11D AN-8805単行ワンマン
JRホームの片隅に秋田内陸縦貫鉄道のホームがあり、単行のディーゼルカーが止まっている。乗車すると程なく1秒の狂いもなく発車。右手にJR線が別れて行く。水量の豊かな米代川を渡ると、小規模の畑と杉林の間を進んで行く。田は少ないように見える。平らな土地に草が生えている所もあり、休耕田だろうか。
車内はクロスシート。鷹巣発車時点で各ボックスに1~2名の乗客がある。合川で上下列車の交換があったが、こちらの列車も対向列車も5割くらいの席が埋まっているようだ。秋田内陸線は累積赤字の拡大で存廃問題が議論されているとのことで、各駅には「乗って残そう内陸線」のポスターが掲示されているが、この時間帯の乗客数を見ると、そのような雰囲気は感じられない。ただ、乗客の3割程度は観光客の様子で、オフシーズンは厳しいのかも知れない。阿仁前田到着時は座席の7割が埋まっていたが、ここで若干下車。
阿仁前田駅には温泉施設が併設されている。途中の無人駅にはコンクリートの簡素なホームに小さな待合室だけの所が多い中、大きな駅舎が際立っている。ここで上下列車の交換。
この辺りから、列車が阿仁川を見下ろす高台を走るためか、少し景色が開ける。線路周辺の田の割合が増えてきた。稲穂に実が付いているのが見えるが、収穫まで先は長そうだ。阿仁合駅には秋田内陸縦貫鉄道の本社や車庫を併設している。駅舎には観光協会などが入り、三角屋根の大きな駅舎建物。昭和63年定礎とあるので、国鉄から転換した頃に建替えたのだろう。駅構内には腕木式信号機も保存されている。
◎阿仁合 932→1000 阿仁マタギ もりよし1号 角館行 急行2001D 2両編成後車=AN-8903
車内は転換クロスシートだが中央部はロビー形式。デッキには自販機もある。また、車掌が車内販売を兼ねている。沿線名物で、比内地鶏の卵を用いた「黄金プリン」を購入。
30代と思しき女性車掌は結構気さくそうだ。車内の小さい子には声を掛け、地元の人らしき乗客とも親しく会話。車内改札中に運転席から呼び出しブザーがあったので、乗客の1人が、「運転士さんからラブコール入っているよ」の声に、「断ります」と返す。
比立内で交換列車の乗務員にもあいさつしている。10年位前に乗った時にも乗客や乗務員に親しげに話しかける20歳前後と思われる女性車掌がいたが、同じ人だろうか。
無人駅の阿仁マタギで下車。他にも10人近く下車する。駅前には打当温泉マタギの湯の送迎用ワゴン車が止まっていたので、他の何人かの下車客とともに乗り込んだ。一通り乗り込むと、温泉に行くかクマ牧場に行くか、車内の人に聞いて回っていた。同じ経営らしい。
少し線路沿いに走ってから東に別れ、少し行くと打当温泉マタギの湯に着いた。隣にはマタギの里資料館がつながっている大きな建物。雪深いためか、三角形の大屋根。広場にあるマタギの小屋の模型や電子基準点なるものを見てから入館。
フロントで入浴と資料館見学、貸しタオルの料金を払い、まずは入浴。広い内湯と小振りな露天風呂がある。風呂は空いていた。浴室内の人数は増減したが最大で3人だった。露天風呂からは近景に田、遠景に森林が広がっている。
入浴後、マタギ資料館へ。外から見ると入口は別々だが、館内の通路でつながっている。外観からの印象と比べて資料館のスペースは小さいが、囲炉裏に熊の毛皮を敷いたマタギの家が再現され、映像資料でマタギの狩猟の様子を再現するなど、雰囲気を出している。
フロントで送迎バスの時間を聞くと、列車の時間に合わせて出してくれるという。そこで、鷹巣行もりよし号の写真を撮るため、それに合わせて1045頃に出してもらうことにした。
しばらく売店を見物。第三セクター?で余り儲かってなさそうなのに送迎までしてくれるので、何か買おうかと思う。資料館で見た「熊の胆」に興味を持ったが、ここにはなさそうだ。特区指定を受けて製造しているどぶろくが気になったが、量り売りで、容器持参とのことなので諦める。馬油セッケンは製造元が九州だったのでパス。結局米ぬかセッケンを買った。
1040頃に、フロントの人の運転で駅方面へ。緩い坂を下り、線路と合流した所で降ろしてもらった。
最初、トンネルの出口辺りを見て回ったが、気に入った構図がなく、少し駅方向に歩き、山林を背景にした位置で待ち構えた。
急行もりよしを撮影して、駅に向かう。田を隔てて奥の農家では、薪割りをしていた。
駅前には観光案内所がある他は田が広がる。打当温泉の送迎ワゴンも2台集まっている。
◎阿仁マタギ 1212→1311 角館 角館行115D AN8804単行ワンマン
車内は満席。通路などにも数人が立つ状態。後部運転席にも乗客がいる。棚に大きな荷物が目立ち、観光客が多いようだ。どのような団体か分からないが、日英2か国語が飛び交う。後ろのドア付近に立ち、後方の景色を眺める。
阿仁マタギを出て少し走ると長いトンネル。時速40~45kmで抜けるまで8分くらいかかる。その後、短いトンネルを2、3本抜けると峠を越えたようで、軽やかに速度を80km/h近くまで増す。上檜木内では乗降は少ないが、上下列車交換のため8分停車。乗客の増減があまり無いまま、幾つかの無人駅を発着。松葉は国鉄角館線時代の終着駅。他の無人駅よりホームが広い。ここで少し乗客が加わる。
終点の角館は、鷹巣と異なり一旦改札を出る方式。駅前広場では、お祭りの山車を組み立てる作業をしていた。
◎角館 1317→1327 大曲 こまち13号 秋田行特急3013M E3系6両編成先頭16号車=E322-24
周遊きっぷのゾーン券は、こまちの立席利用(空席があれば座れる)ができるが、車内はデッキに人が立つ混雑。大曲まで10分なので、そのままデッキに立つ。
秋田新幹線の方向が変わる大曲では、上りこまちが同時進入で、同型の新幹線車両が並走する風景を面白がる乗客もいた。
◎大曲 1332→1349 横手 新庄行2442M 701系4両編成2両目=クモハ701-38
新幹線からの乗り換え客で混雑したためか、3分遅れで発車。乗換口に近い先頭車には立客もいるが、2両目以降はさほどでもない。
ロングシートに収まり、古戦場のある後三年を過ぎると北上線と接続する横手に到着。
◎横手 1356→1516 北上 北上行734D キハ100系2両編成ワンマン先頭=キハ100-43
後ろの車両には、ドラゴンレール大船渡線のステッカーが付いている。車内の運賃表示器や時刻表も大船渡線と北上線が並べて表示されているので、共通運用らしい。既に各ボックスには1~2名の先客があったので、ロング部分に着席。
1駅目の矢美津付近には実の付いた葡萄棚が広がっていた。その後しばらく、畑や雑木林の中を走行する。
ほっとゆだで、まとまった乗降があり、降りない人の中にも、空いたボックスへ席を移動する人が見られた。ここで上下列車交換。ここからは錦秋湖に沿って進む。赤い鉄橋で錦秋湖を渡ると、左手に錦秋湖を見ながら、トンネルとトンネルの間で沢を渡る。和賀仙人までは人気の少ない森と沢と湖が続く。
和賀仙人からはまた人里に近づく。林の合間に見える田の割合が増えてきた。疎らながら集落も見られる。
岩沢や横川目は無人駅だが、その駅舎は異様に大きい。何かの施設を兼ねているのだろうが、案内板等は見当たらず、ホームからは窺い知れない。途中、小雨が窓に当たったが、その後は止んだようだ。江釣子辺りからは北上平野。広々とした田が広がり、その合間に建つ住宅の割合がだんだんと大きくなってくる。しかし、秋田内陸縦貫線と違って、途中の駅での乗降が少ない。ほっとゆだまでは小さい子が走り回っていたが、それもなくなり、車内は静寂に包まれている。
◎北上 1518→1529 花巻 盛岡行1541M 701系2両編成ワンマン後車=クハ700-1032
2分接続だが地下道を通って隣のホームへの移動。2両編成のワンマン電車は混雑していて、花巻まで立って過ごす。
花巻駅のコンコースから自動ドアで仕切られた待合室には明治や昭和初期の花巻駅や花巻温泉の写真が飾られ、また、蕎麦やアイスクリームのカウンター、パン屋が並び、小型のフードコートのような役割も兼ねている。
16時に近くなり、バス乗り場へ。僅かに雨が降っている。10人近い人が待ち、バス乗り場の屋根の下に入り切れない。
◎花巻駅前 1600→1632 鉛温泉 新鉛温泉行 岩手県交通バス 岩手22き1144
駅を出た時点では8割以上の席が埋まっていたが、少しずつ空いてきた。花巻温泉郷に点在する幾つかの温泉毎に1、2組の下車がある。
鉛温泉で下車。下車の際に千円のバスカードを購入。帰りは宿の送迎バスになるかも知れないが、明日松川温泉に行く県北バスと共通のため。
雨は先程より強くなった。直ちに傘をさすほどではないが、藤三旅館の旅館部への道を早足で下りる。
宿に着いて名乗ると、ロビーに案内され、係が来るまで少し待つ。帰りの送迎バスの案内が掲示してあった。チェックアウトを済ませて9時半頃にロビーに集まると、947発とのこと。
部屋係が来て、まずロビーで風呂の案内。5箇所あり、それぞれ源泉も異なるので、できるだけ多く回って欲しいと案内される。
その後、部屋に案内される。昭和16年築の木造3階建の本館3階の24号室。6畳+縁側の一般的な造り。空の冷蔵庫と電子ロックの金庫がある。テレビは小振り。
宿帳に記入し、夕朝食の時間を調整。夕食1815、朝食0730とした。いずれも部屋食。先日の岩手・宮城内陸地震で、この付近の被害は無かったものの、いわゆる風評被害で来客が減っているということで、9月まで、宿泊客が花巻市内の観光施設を無料で利用できるキャンペーンを行っているそうだ。旅館名と日付のスタンプが押された利用券に記名して持って行くと、宿泊日を含めて3日以内有効とのこと。ただ、花巻駅周辺の施設は無く、雨も降っているので、使うことはなさそうだ。
部屋係が下がり、お茶を飲んで休憩してから、17時半頃に、まず名物の白猿の湯へ。ここは深さ125cmの立って入る湯で、旅館の内湯としては深さ日本一らしい。源泉に近づけるため浴室自体が深く掘り下げられているために天井が高い。浴室の入口が2つあり、脱衣場はそれぞれの入口から階段を下りた浴槽近くにあるが、特に男女別の表示はなく、空いている方を使うようだ。
メインの浴槽は、深さがあるが、縁の近くは幅10cm弱だが足場のような段があり、そこに半分腰掛けることもできる。また、座る程ではないが一部浅い所もある。湯船の底には、何故か岩が幾つか転がっている。
隣に、ぬるい湯の小さい浴槽があり、こちらは普通の深さ。メインの浴槽がやや熱めなので、たまに小さな浴槽で冷やしながら入る。
その後、隣にある露天風呂付きの桂の湯に入るが、夕食の時間が近づいたので、すぐに出る。
部屋に戻ると程なく夕食が運ばれる。他の旅館もそうだが、ご多分に漏れずメニュー豊富。刺し身類は三陸のものという。鍋物は、杜仲茶ポークのしゃぶしゃぶ。お茶の葉で育てた豚肉を使用しているという。各品について内容の説明があるが、とても覚え切れない。
1時間近くかけてほぼ食べ終え、フロントに連絡すると、片付けて布団を敷いて行ってくれた。しばらく食休み。21時に館内放送が流れ、本日の業務終了を告げる。ただ、風呂は24時間使えるし、自販機もある。
これまで貸切時間だった21時から銀の湯が男性用の時間になったので、しばらくしてから行くが、小さな銀の湯は既に2、3人の先客があり、一杯だったので、逆方向の河鹿の湯を目指す。案内を見ながら行くと、自炊部の奥にあるようだ。21時を過ぎて減光されていることもあるが、自炊部の廊下は旅館部と比べて殺風景。その奥にあるせいか、心持ち鄙びた雰囲気だ。こちらも2人の先客があったが、広さがあるので問題ない。洗髪などもしながらゆっくり入る。その後、再び銀の湯の様子を見るが、先客が浴槽の前でくつろいでおり、入り込み難い感じ。しばらく、近くのマッサージ機で時間をつぶすが、なかなか出てこないので一旦部屋に戻る。
テレビ番組を見てから24時近くに白猿の湯へ。ほぼ入れ替わりで若い男性が出て行き、その後は貸切状態。40分位いて、部屋に戻り、1時過に消灯。
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