JR東日本 2026年3月の運賃値上申請 - 東逗子からの横須賀線運賃試算
東日本旅客鉃道(JR東日本)は令和6年(2024年)12月6日に、2026年3月からの運賃改定を申請したことを発表しました。
詳細はJR東日本のニュースリリース参照↓
昭和62年(1987年)にJR東日本が発足して以来、消費税の導入や税率改定以外の理由で運賃を一斉に値上げするのは、初めてとされます。(首都圏では最近、鉄道駅バリアフリー料金の加算がありましたが)
国鉄時代の昭和50年代に毎年のように値上げしていたことを考えれば、トクトクきっぷや料金で調整してきたとはいえ、よくここまで運賃値上げを抑えていたと思います。
ただ、今回の値上げは、横須賀線を含む都市部の近距離運賃の上昇率が高くなっています。
大きな理由は、運賃表の統合と、特定区間の縮小です。
現在、JR東日本の運賃表は、幹線、地方交通線、電車特定区間、東京山手線内の4表で構成されています。国鉄時代は長らく全国1つの運賃表で、都心部も地方も平等にと、今で言うユニバーサルサービスの考えだったと思われます。しかし、国鉄の赤字が拡大する中で、ローカル線の収支改善の観点から、昭和59年(1984年)4月の運賃値上げの際に、幹線と地方交通線の2表に分かれ、更に山手線・大阪環状線内と10km以内の国電区間は運賃据置として別表に分かれました。その後、昭和61年(1986年)の運賃改定時に国電区間の距離制限がなくなり、JR発足時には、幹線、地方交通線、電車特定区間、山手線内・大阪環状線内の4表で引き継がれました。それが今回、幹線と地方交通線の2表にして電車特定区間と山手線内は幹線に吸収されます。元からの幹線も値上げなのですが、幹線より安かった電車特定区間が値上げ後の幹線と同額になるため、値上げ幅が大きくなるのです。その代わりなのか、首都圏で令和5年(2023年)から加算されていた鉄道駅バリアフリー料金は廃止になります。
特定区間は、国鉄と競合する私鉄がある区間の運賃を低く設定することで競争力を高めようとするもので、横須賀線は京急と、湘南新宿ラインは東急などと競合しているので、一部の区間で特定運賃が設定されています。今回、特定区間の設定を大幅に減らす方針のようで、詳細は運賃表の改定が認可されたあとで発表するようですが、例示されているものを見ると、逗子に掛かるものは存続、田浦〜久里浜に掛かるものは廃止としています。現在は新橋・品川との間で特定区間が設定されている東逗子はどちらにも記載されていませんが、「記載しているの区間は他の鉄道事業者と直接競合している区間です。」とあり、それでも廃止する特定区間が例示されている以上、「今後も引き続き設定する区間」に記載のないところは、廃止になるのではないかと思われます。
通勤定期運賃は、普通運賃よりも値上げ率が高く、特に6か月定期は割引率の見直しを伴います。さらに近距離の値上げ率は高く、電車特定区間であった路線の6か月通勤定期は、最短1kmで20,660円から26,620円へ29%の値上げ、50km区間では120,040円から130,350円へ9%の値上げです。なお、幹線と地方交通線の通学定期は改定なしとなりました。電車特定区間から幹線への統合があるので結果として値上げですが、通勤定期と比べれば値上げ率が抑えられています。
今回発表された運賃表を基に、横須賀線列車運転区間である東京・久里浜間各駅と東逗子との間の普通運賃と6か月通勤定期運賃を以下のとおり試算してみました。
前述のとおり新橋・品川との間の特定区間の存廃が不明ですが、廃止と見込んだ「?」付きの試算となっています。実際の施行時と異なる可能性もあるので、参考ということでご理解ください。
ここまでの話をまとめると、電車特定区間や山手線内、そして通勤定期が特に大幅な値上げになります。ローカル線の主な乗客は通学の高校生であることが多いですが、この層を値上げして鉄道離れが進んではネットワークが維持できなくなります。利用者の多いエリアを重点的に値上げすることで、会社全体の収益向上を目指していると思われます。
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